用語解説

 喀痰検査(かくたんけんさ)
 痰の中の結核菌を調べる検査で大きく分けて塗抹(とまつ)検査と培養(ばいよう)検査があります。塗抹検査は 出して頂いた痰をガラスの上にうすく塗り特殊な染色(Ziehl-Neelsen染色:チールニールセンせんしょく)をして 顕微鏡で確認するものです。結核菌は赤く染まって見え、また、菌自体は前述の写真のように細長いため、赤い針の ように見えることが多いようです。培養検査は痰の一部を小川培地という寒天の上に少量うすく塗りのばし、暖かい ところにおいて(乾かないようにして)、痰の中の菌を育ててみる検査です。結核菌が育って増えてくれば塊になるため 痰の中に生きた菌が少しでもいれば肉眼でも確認が可能です。ただし、結核菌は育つのが非常に遅いため、痰の中に菌が いることや痰の中に認められた菌が死んでいることが確認できるには最低でも8週間かかります。ミジット(エムジット :MGIT):Mycobacteria Growth Indicator Tube法、一般的な上記の培養検査では結核菌の有無がわかるまでに時間が かかるため、塗抹検査で認められた菌が生きているかどうかを確認するために開発された方法です。液体培地を入れた 試験管の中に、培地中にとけ込んでいる酸素によって阻害される蛍光化合物が埋め込まれており、もし活発に呼吸する 抗酸菌があれば酸素が消費されることから紫外線を当てると試験管の底と培地の表面にオレンジ色の蛍光が観察される というものです。検出にかかる時間もMGIT法では平均約18日、小川培地では平均約32日と、迅速に結果が出るよう です。ただし、保険適応の問題や、培養後の薬剤感受性試験(耐性検査)や、菌種を確定するためのナイアシンテスト等 がMGIT法ではできないなど、難点もあります。

 胸部レントゲン検査
 いわゆる「胸のレントゲン」で、結核を含めた肺の病気の基本になる検査です。レントゲン写真ではものがあると白く 写り、何もないと黒く写ります。(骨は白く写り、身体の外は真っ黒)肺は基本的に空気が入るところのため黒っぽく写る のが正常です。(黒すぎてもいけませんが・・)しかし、結核菌などの細菌がいて内部が赤く腫れていたり、空気の通り道に 痰がつまっていたりして、本来空気のあるところに空気がないと白い影になります。肺は小さな空洞(肺胞:約0.14mm) の集まったスポンジのような構造をしています。結核菌を吸い込んだ場合、途中の気管支や最終的にはこの肺胞まで到達します。 ここで、約90%は肺胞内の白血球の先兵(マクロファージ)に食べられますが、菌の量が多かったり先兵の働きが弱かったり してとりついた場合、菌を拡がらせないための生体の免疫反応の一部として、菌を取り囲むように肉芽腫が形成されます。 画像上はその一つ一つが直径数mmの小さい粒の様に写ります。しかし、それがたくさんになってくると、隣と重なって雲のようになり、 さらに進むと雲の中心部が菌や菌と戦った後の白血球によってとかされて直径が数〜十数cmの空洞になります。空洞内は痰や死んだ菌、 壊れた肺の一部などがつまっていることもありますが、気管支を通じて外とつながって空気が入っていることもあります。

 非結核抗酸菌症(非定型抗酸菌症)
 抗酸菌というのは、結核菌の他に結核菌と非常に近い関係にある「牛型菌」や「アフリカ菌」から、 やや近い関係の「M.kansasii」、 やや遠い関係の「鳥型菌=M.avium」や「M.intracellulare」があり、 その総称です。一般的に結核菌は定型抗酸菌、その他のものは非定型抗酸菌(あるいは結核と区別するために非結核抗酸菌) と言われます。塗抹検査(前述)で、外観上は結核菌と全く同じなため、長く混同されてきました。しかし、非定型抗酸菌 には病原性が少なく、人から人へは移りにくいとされているため、結核予防法の対象からは外れており、菌が出ていても必ずしも 入院の対象にはなりません。ただし、徐々に肺に影を作り、場合によっては肺の機能を損なうため、内服等により治療が必要な場合 があります。以前は余り重要視されませんでしたが、徐々に増加しており(一部では検出菌の十数%、西日本でやや多い傾向にある ようです。)、結核との鑑別が重要になってきています。

 痰の遺伝子的な検索
 約10年前までは結核であることが確定するには8週間後の培養の結果を待たなければいけませんでしたが、 最近は上記の非結核抗酸菌のことも考え、もっと早く判別する方法が求められてきました。その結果、 喀痰中の結核菌の遺伝子を検出する方法が数種類出てきています。結果は数日から10日前後で出ます。 ただし、遺伝子的な検索では、結核かそうでないかは非常に正確に判定できますが、死んだ結核菌でも遺伝子が ある程度の長さで残っていれば陽性に出るため、治療の効果を判定したり、経過を追ったりすることはできません。