岡山県南部に位置する児島湖は、児島湾を締め切って造られた人造湖で、湖面積は10.88km2とサッカーグラウンド1500面分、流域人口は岡山県の約1/3にあたる67.2万人です。そんな児島湖では多様な生態系が形成されており、様々な鳥や魚が生息しています。
岡山県健康づくり財団では児島湖の水質調査を行っていますが、船の音に反応して多くの魚が跳ねます。特に多いのはボラで、夏場に水温が高くなるとたくさん跳ねています。夜間の調査では、ライトに驚いてジャンプしたボラが船の中に飛び込んで来るので、思わぬ攻撃を受けることもあります。
ボラは出生魚で、大きくなるにつれてオボコ→イナ→ボラ→トドと名前が変わります。一般的にボラと呼んでいるのは成魚になった状態で、更に成長して50~60㎝を超えるものはトドと呼ばれています。“結局”や“最終的に”という意味で使われる“トドのつまり”という言葉はこのことから由来しているとも言われています。また、“威勢がよくさっぱりした気風の若者”を表す“いなせ”という言葉は、漢字で書くと“鯔背”となり、日本橋の魚河岸の若い者のまげが、ボラの幼魚であるイナ(鯔)の背に似ていたことに由来していると言われています。ボラに由来する言葉が多く残されていることからも、日本人にとって昔から身近な魚であったことが分かります。
ボラはあまりきれいではない水でも生息可能で、水底の藻類と一緒に泥も吸い込んでしまうため臭いがきつく、飛び込んできたボラが服にあたると臭いがなかなか消えず大変なこともあります。泥臭いイメージがあり、あまり食用に利用されていないボラですが、水質のきれいな場所で獲れたボラは、臭みが少なく非常に美味だとも言われています。特に冬場のボラは脂を蓄えるため、寒ボラと言われ刺身にすると絶品だそうです。また、高級珍味として知られるカラスミはボラの卵巣を加工したものです。

現在、児島湖には大量のボラが湖内に生息しています。水質がきれいになり、食用に利用されるようになれば、高級魚の一大産地となることも夢ではないかもしれません。児島湖に行くことがあればそのような視点から水質を見るのも面白いかもしれませんね。
参考文献
1)児島湖ハンドブック(令和7年3月)







