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公益財団法人岡山県健康づくり財団


新型コロナ感染症流行下における結核診療体制について

 

 新型コロナ感染症流行下における結核診療体制について

 

DOTSへの影響を中心に

新型コロナ感染症流行下で、結核の医療体制が少なからず影響を受け、結核患者の管理並びにDOTS施行にあたって、様々な問題点が出てきています。この度、結核医療相談・技術支援  センターでは、そうした状況を把握するため、岡山県下の結核専門医療機関や保健所、調剤薬局にアンケートや聞き取り調査を行いました。

 

【結核専門医療機関・保健所・薬局などへのアンケートから】

南岡山医療センター、健康づくり財団附属病院、平病院へのアンケートでは、すべての病院で、新型コロナ感染症流行下での面会制限などにより結核医療へのいろいろな影響が出ていました。とりわけ大きかったのがDOTSで、保健所業務の逼迫もあり、従来通りのやり方が困難で、現場では薬剤関連を中心に状況に応じた対応が求められていました。また、岡山県下の11か所  保健所・支所へのアンケートにおいても、すべての機関でDOTSへの何らかの影響があったとの回答がありました。

 

(1)DOTSへの影響

医療機関、保健所双方から、感染対策上の面会制限や結核専門医療機関の集約化で、家族との連絡や医療機関と保健所間での連携がとりにくく、情報収集や情報共有に支障が生じていました。

また、多職種による入院中のDOTSカンファレンスや退院DOTSカンファレンスも十分には開くことが困難だった との意見が聞かれました。

 

地域DOTSにおいて、医療機関からは、外来受診の減少や電話再診などで、患者・家族とのDOTSがうまくいかなかったケースや、保健所側からも、原則訪問から電話での実施に切り替えたり、業務多忙で定期服薬確認での遅れや、担当保健師によるDOTS体制維持の困難さが指摘されました。

 

(2)新型コロナ流行下でDOTSを行うにあたっての工夫

 院内DOTSでは、遠隔診療ツールを利用して、患者・家族、保健師、主治医、看護師、 ソーシャルワーカーなどが各モニター越しに顔の見えるカンファレンスを行い、患者家族の不安解消に向けてコミュニケーションを図ったり、一堂に会する場合でも、医療機関と保健所間で事前に打ち合わせを十分に行うことにより、時間短縮を目指す取り組みがみられました。

 

地域DOTSでは、特に薬剤関係で様々な創意工夫がみられ「岡山晴れ晴れDOTS手帳」に加えて、

服薬指導用ビデオを院内で作成し、結果として時間短縮・接触時間短縮につながった(倉敷中央病院)

かかりつけ薬局に対して、残薬確認などのDOTS協力を依頼し、地域連携支援体制の強化を図った(保健所)

・外来指導において、院内で副作用チェックシートを作成して効果的に行うことにより、時間短縮が可能となった(南岡山医療センター)【図1参照】

などの報告がありました。

これらの意見をもとに、令和3年度岡山県結核診療拠点病院研修会において、パネルディスカッションを行い、結核予防会結核研究所 永田容子先生より、全国のDOTSの動向や今後取り組むべき課題についてアドバイスをいただきました。

 

永田容子先生からのアドバイス

【DOTSの取り組みについて】

 全国的にも、新型コロナ流行下で面会制限もあり、DOTSの方法を変えたところが多く、電話連絡やリモートでのDOTSとなっているが、できれば電話だけよりも何らかの方法での対面が望ましい。直接顔が見えることにより、患者・家族と医療従事者との間で信頼関係が築きやすく、治療継続がスムーズに行われる。

また、今までよりも調剤薬局によるDOTSが増えて充実してきており、地域の薬剤師が 服薬指導や残薬確認などを積極的に行って、多忙な医療機関や保健師業務を補完する役割もあると考えられる。岡山での取り組みもそうした地域連携の一環として期待でき、 「岡山晴れ晴れDOTS手帳」の有効な活用も見られている。

 

 付け加えるとすると、DOTSを行うにあたって、患者リスクアセスメントを有効に行う ことが重要である。ニューヨークやオーストラリアなどの海外の例を見ても、個々の患者の 問題点を把握してリスクを評価し、優先順位を決めたり患者の状況に応じたDOTSを行う ことにより、より効果を上げていることが報告されている。

限られたマンパワーの中でどの患者を優先するかとか、患者によってDOTSのやり方を選択できるように、医療機関、保健所、かかりつけ薬局など地域全体で意思統一を図っていく ことが求められる。

【図1】

 

3)結核患者管理体制・研修会についての課題

患者管理やコホート検討会・研修会についての新型コロナの影響について、岡山県下の保健所・支所(計11か所)へアンケートを行いました。

保健所へのアンケートでは、新型コロナへの対応のため、ほとんどの保健所でコホート検討会が従来通りの形式では実施できず、保健所内で規模や人数を縮小して実施したり、またリモートでの研修を取り入れる工夫をしたりしていました。同様に医療機関においても結核の研修会は実施できていない状況で、今後、新人研修の必要性や結核に対する意識を低下させないために、  新型コロナ感染症の研修と併せて感染対策の一環として行っていく方向などが提案されました。また、その他の問題点として、複数の医療機関で、新型コロナを最優先とした診療体制に   よって、結核が見逃されて発見の遅れにつながったケースも見られました。

 全国的にも、結核管理体制は特に都市部を中心に一層困難となっており、そうした状況に  ついて永田先生より現状報告をしていただきました。

永田容子先生からのコメント

 全国的にも、結核の定期健診や接触者健診、管理健診の施行状況は、新型コロナの流行 状況によってかなりの地域差がみられており、予定通り行われた地域がある一方で、中止 せざるを得なかった地域や時期をずらしたところもある。現在、実態を分析中であり、今後に生かせるよう検討している。

また、咳や発熱の症状で受診した結核患者に対して、岡山県の場合と同様、コロナの検査 のみで終了して、結果として結核まで行きつかなかった例も散見され、患者発見への影響も懸念されている。最も懸念される感染源である塗抹陽性患者をいかにして早く発見できるかが大きな課題である。

結核の罹患率は長期的には低下傾向にあるが、今後も低蔓延状態を維持し、さらに多剤耐性などの薬剤耐性菌を作らないよう、DOTSを確実に実施し、地域連携を含めた結核管理体制を構築する必要がある。

 

最後に

 新型コロナ流行下での結核医療は、保健所業務の逼迫や対面制限などにより様々な問題点が 浮き彫りになりましたが、医療機関・薬局・保健所などが、「岡山晴れ晴れDOTS手帳」や  チェックシートなどのツールを用いたりして、今まで以上に地域連携を強化し、各機関が柔軟に業務を分担することによって情報共有を行っていく必要があると考えられました。

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